クラウドサービスにおけるシニアのつまずきポイント
シニアがクラウドサービスを利用するにあたり、まず最初につまずくポイントがあります。そして、このポイントが最大のつまずきポイントだったりします。
両親にiPadをプレゼントしてからしばらく経ちます(「高齢者にiPadを渡すときの5つのポイント」)。iPadを使っていると、アプリなどを利用する際に必要になるクラウドサービスがあります。当然、クラウドサービスにはアカウントが必要なので、アカウントを作成してあげた状態で渡しています。むろん、IDとパスワードも一緒に渡しています。
アプリを利用するときに、サービスが提供しているアカウントかGoogleのアカウントなどでログインしなければならないケースがありますが、だいたいこのタイミングでどうすればいいかわからないと質問が飛んできます。
質問に対応していると、シニアにとって、文字入力は非常に負荷の高い作業であると同時に、アカウントという概念が理解できないんだなということが痛感させられます。もちろん、同じシニアでもコンピュータシステムにどれだけ触れてきたかということによると思いますが、iPadやスマートフォンが初めてのネットデビューというような人のほとんどは同じ状態ではないかと思うわけです。
まず、入力もキー配列はアルファベット順に並んでいないし、そこで入力したい文字を探すために迷うわけです。パソコン経験者で、キーボードによる文字入力経験者でもタブレットのソフトウェアキーボードは使いづらいわけですから、そうでない人に取ってはいっそうハードルは高いわけです。
そして、アカウントという概念がわかってもらえないです。ちょっと近所の病院の電話番号をネットで探してみせたり、飛行機の予約をしてあげたりすると「この箱で、どうしてこんなことができるのか想像できない。何が入っているのか?」と言う母親にアカウントの概念を理解しろというのは酷というものです。
だいたい ”この箱” を使うのに、どうして何回もIDとパスワードを入力しなくてはいけないのかという点も不思議に思っていることでしょう。キーチェーンなどで管理しておいても、アプリ使用時に起動するアプリ内ブラウザでのGoogleログイン画面では、キーチェーンは機能しないのも不便です(FacebookやTwitterなども同じ)。
アプリ自体はタップやスワイプだけで操作できて、ユーザーインターフェースも使いやすく設計されていて、どんなにユーザーに優しく配慮されていても、ログイン画面だけは違います。
この辺がもう少しユーザーのことを考えた作りになってくれない限りは、いまの日本においてITが高齢者に普及していくのは難しいのだろうなということをひしひしと感じています。
いつまでも変わらないのは、コンピュータシステムでユーザビリティを考慮するときにシステムそのものの機能に目を向けていて、ログインはできて当たり前という前提で話が進んでいるためだと思いますが、ITが苦手なおじいちゃん、おばあちゃんでもわかりやすいログイン画面があってもいいのではないかなと思います。