アニメの中のユーザビリティ間違い(魔法少女まどか☆マギカ)
アニメの中で出てくるデバイスはカッコよく演出されていることが多く、見た目にすごいですが、必ずしも最適なユーザビリティとはいえない場合があります。
以前もブログの中で何度か「映画の中のユーザビリティ間違い」を引き合いに出して、ユーザビリティについて語ったことがあります。今回はとあるアニメを見ていたときに出てきたエレベーターの話です。エレベーターのユーザビリティについては「エレベーターの開閉ボタン 〜走ってきた人のためにとっさに開くボタンを押してあげられるか?」でも書きました。
最近観た『魔法少女まどか☆マギカ 第5話 後悔なんて、あるわけない』1の7:18あたりで、美樹さやかが、病院のエレベーターで屋上に向かうシーンがあります。ドアの開閉と行き先のボタンはタッチパネル式ディスプレイに表示されており、目的の階まで指でドラッグする仕様となっています。
上条恭介を乗せた車椅子を押した美樹さやかが、160階の屋上に向かうのに、120階から160階まで指でドラッグしています。タッチパネル式のデバイスには階数が表示され、指で触れている階に関しては病室の番号が書かれています。例えば、120階なら121から始まって129まで。
『魔法少女まどか☆マギカ』は近未来地方都市を描いていると言われています。未来感を出すためか、エレベーターにタッチパネル式で、ドラッグによってエレベーターを操作していますが、ドラッグする手間とボタンを押す手間、どちらが容易でしょうか。ドラッグするということは、現在の位置を把握して、その上で目的の位置まで指を持っていかなくてはいけません。目的地のボタンを押すことに比べて、操作を完了するまでのステップが多くなります。仮にも体の不自由な人が利用することが多い病院の中で、より手間のかかる操作を要求するUIはすぐれているとはいえません。
そもそも、タッチパネル式ディスプレイを使うメリットはありません。表示内容が頻繁に変更されるものであればタッチパネル式ディスプレイは有効ですが、エレベーターのように建物に備え付けられて、表示する内容が固定され、決められた操作しか行わない場合、従来の物理ボタンで十分ですし、コスト的にもわざわざタッチパネル式ディスプレイを使うメリットはないでしょう。
- Amazon Prime Videoで追加料金なしで観ることができます(記事執筆時)。 ↩