万年筆を見直そう
ふだん使っているペンは何だろうか。おそらくボールペンを使っているという人が多いと思う。次いでシャーペンであろうか。万年筆というと、小学校か中学校の書き方の時間に少し触ったぐらいという場合も多いのではないだろうか。それぐらい万年筆は一般的に使われていない。
そういう人に万年筆を持たせてみるとおもしろいことが起こる。なんとペン先を反対に持つ人が多いのだ。本当は上にするべきほうを下に向けて字を書こうとする。本当に万年筆のことを知らないんだなと少しがっかりする。
そんな万年筆を見直してもらいたいし、いままで持ったことがない人はチャレンジしてもらいたいと思う。なぜか? だって、書きやすいんだ。
万年筆を持つには、慣れていないと少し大変かもしれない。ちょっとだけコツが必要だ。ボールペンのように力を入れて持つものではないからだ。だけど、力が必要がないために書きやすく、長時間書き続けなければならないときに楽なのだ。紙との相性もあるが、ボールペンに比べるとすらすらと書ける。
また、万年筆は最初は書きにくいかもしれない。そういう筆記具だ。でも、書き続けることによってボールペンなんかよりも遙かに書きやすくなる。万年筆は持つ人の書き癖を覚えるという。持ち主の書き方、ペンの持ち方によって、書くたびにペン先の同じ面が削れて紙との滑りがよくなるのだ。だから、万年筆を買ってきたら少しのあいだは辛抱して使ってもらいたい。その辛抱に必ず万年筆は答えてくれるから。
万年筆というと高級な筆記具というイメージがある。確かにボールペンやシャーペンに比べれば高いのかもしれないが、意外にそうでもない。おそらく、「万年筆=モンブランのマイスターシュテュック=5万円超え」というイメージが多くの人にあるので、万年筆は高級という印象を持たれがちだが数千円で買えるものも多く存在する。確かにマイスターシュテュックは高い。人生の節目に買ったりプレゼントされたりするようなものだ。だが、万年筆であっても所詮は道具だ。いや、むしろ道具だからこそどんなに高級な万年筆でもガンガン使ってあげることが万年筆に対する敬意だと思う。
だが、いままで万年筆を持ったことがない人がいきなり高級な万年筆に入るのは敷居が高い。だから、もう少し安めの万年筆から入っていってはどうだろう。価格が安いからといってもなめてはいけない。作りがいいものがたくさんあるのだ。
私はふだん、ラミーというドイツのメーカーのサファリという万年筆を使っている。この万年筆、ペンを持つ部分が三角に近い形をしている。その形が自然に指の位置を決める。つまり、自然に持つと万年筆の正しい持ち方になるような形をしているのだ。話に聞くところによると、この万年筆はドイツの小学生が書き方をはじめるときに使うようなものだという。だから、このような配慮がなされている。そしてまた書きやすい。価格も約4,000円出せば手に入るのも嬉しい。
また同じ小学生向けに作られてという万年筆ではペリカンのペリカーノジュニアという万年筆もあるので、デザインの好きなほう、ぐっときたほうを持つのもいいと思う。
ペン先はFを使っている。万年筆は線の太さによってペン先が異なる。F、M、Bなどたくさんある。個人的には一般的なノートに文字を書く場合はFがちょうどいいかなと思っている。
手軽にはじめられる低価格の万年筆で、書く楽しみというものを増やしてもらいたい。安くても万年筆だ。ちょっとした文豪気分も味わえるし、心も豊かになるというものだ。
ちなみにこのラミーのサファリは毎年限定モデルも出ている。限定ものという言葉に弱い人には危険なアイテムかもしれない。また、気になりだすとコレクターズアイテムとして集めたくなってしまうのも万年筆の特徴なのかもしれない。そこのところは十分に注意してかかったほうがいい。