月額課金によるアプリの二極化
Appleから月額課金するアプリの適用範囲の撤廃が発表されました。これにより、これまでは映像・音楽配信、ニュース配信、オンラインストレージなどのクラウドサービス用アプリでしか月額課金が行われませんでしたが、これからは他のアプリでも月額課金が可能となります。
詳細は各ニュース記事に譲るとして、開発者にとっては朗報で、よりよい機能を提供するための資金を集める手段が増えたことになります。これにより良質なアプリが増えれば、ユーザーにとってもメリットが大きいといえるでしょう。
しかし、逆に言えばユーザーは課金対象のアプリをより絞り込む、つまりはアプリの二極化が起こるのではないかと予想できます。
ユーザーにとって、いままでは基本的にアプリは買い切りで、バージョンアップは無料で受けていました。追加の費用は、アプリ内課金により、より高度な機能を追加したり、広告を除去したり、ゲームなどのアイテムを買うための精霊石を追加したりする場合に限られていました。
これからはアプリ自体を月額課金で販売するということが可能になります。つまり、アプリの機能を使い続けたければ、お金を払い続けなければなりません。これはAdobe Creative Cloudによく似ています。課金することで、買い取りだったPhotoshopなどのアプリケーションを月額の安い費用で使えるようになり、Photoshopの素晴らしい機能でよりよい作品作りができるようになります。しかし、これはAdobeのアプリケーションのように、プロ向けで超高機能、買い取りだと高額になったものだからこそ、月額課金で安い価格で契約するというサブスクリプションモデルが成り立つものです。
お金を払うユーザー側の視点では、同じ機能のアプリケーションなら毎月払い続けるのではなく、できれば1回の支払いでずっと使い続けたいわけです。もし、ほとんどのアプリが月額課金制を導入するのであれば、ユーザーはより自分の使うアプリを選別し、お金を毎月払っても使う価値のあるアプリだけに課金するようになります。
ユーザーにとっては使うアプリが絞り込まれ、よりシンプルにiOSデバイスが使えるようになるとも言え、そこがAppleの狙いでもあるのでしょう。よりユーザーに魅力的なアプリを提供したいのだと思います。
そして、一見、開発者にとっては収入の種が増えると思える今回の発表ですが、より魅力的な機能、使い勝手を継続的に提供できなければ、使われないアプリになっていくという危険もはらんでいます。新機能や使い勝手の改良を継続するということは、かなりしんどいものです。このしんどい作業を乗り切り、ユーザーによりよいアプリが提供できる開発者になることが勝利への道となります。
今回のAppleの発表は、アプリ開発者にとっては魅力的でもあり、そして試練でもあると言えますし、ユーザーにとってはより魅力的なアプリが出てくるわくわく感と、いままで使っていたお気に入りのアプリが同じ機能のままで月額課金制に移行してしまう不安とでいっぱいのものでしょう。