たまに喫茶店のモーニングを食べたくなるとき
朝食をやめてしばらくたつが、たまにモーニングを食べたくなるときがある。温かいコーヒーにパンの焼けたにおい、卵やサラダが恋しくなるときがある。
朝食をやめてからしばらくたつ。やめたきっかけは一冊の著書に出会ったからだ。日本橋にある丸善をなんとなく見て回っていたときに出会った『長生きしたければ朝食は抜きなさい―体の不調を根本から改善する驚異の「甲田式健康法」とは (KAWADE夢新書)』を読んで、朝食をやめてから2ヶ月ほどでおなか周りが6センチも減ったのだから、もはや朝食を食べる気にはなれない。
だけど、時折恋しくなるときがあるのだ。焼けたパンのにおいをかいで、朝焼いたばかりのパンを食べる人がうらやましく思える。バターを塗るときのバターナイフが焼けたパンの表面にこすれる音だったり、パンの熱で溶けたバターのにおいだったり、ほっとした気持ちにさせるコーヒーの香りだったり、朝しか味わうことのできない独特の空気感の中で食べる朝食が、どことなく懐かしさを感じさせて、また食べてみたいと思うことがあるのだ。
そんなときは遠慮なく喫茶店に入ることにしている。朝入る喫茶店は、何となく落ち着いている気がする。時間帯にもよるのだろうが、仕事をする人はそうそうに職場に向かっているだろうし、勉強をする人はスターバックスのような小洒落たカフェに行くだろうし、朝喫茶店でモーニングを食べにくる人はちょっと時間を持て余した感じの人が多いような気がする。それに、それほど客が多くないので静かだ。
ちょっと静かで落ち着いた朝の喫茶店でモーニングをいただくのが至高の時間だ。時間を贅沢に使っている気がする。モーニングにはたいていパンがついている。サンドイッチの場合もあるが、食パンであることが多い。そしてバター、場合によってはジャムかマーマレードが付いている。卵料理はゆで卵かスクランブルエッグがほとんどだ。ベーコンかハムの付け合わせがあり、ちょっと豪華なところだとサラダがついている。
このパン、卵料理、ベーコンまたはハム、サラダの組み合わせも朝独特だ。朝限定のメンバーだ。朝にしか出会えないこの顔ぶれを平らげていく。朝食抜きが体に染み付いた私とっては、朝にしては意外にボリュームがあり、モーニングを食べた日は昼ご飯がちょっときつかったりするが細かいことは気にしない。パンをかぶりつくときのあのほわっとした感触、パンってこんなにおいしかったっけと思う瞬間だ。口の中でバターと混じり合うときの味わいもいい。やっぱり、モーニングにはパンが一番のお似合いだ。
食べ終わると手持ち無沙汰になり、かといってすぐに店を出る気はないので、ばつが悪そうに本でも開いてみる。こういうときに本を開いても意外に頭に入ってこない。そうこうしているうちに、遠くの席から保険の営業の声が聞こえてきたりする。ああ、だいたい10時ぐらいを回った頃かなと思いながらゆっくりと店をあとにするのだ。
そして気づくのだ。ああ、俺は焼いた食パンが食べたかったのだと。